呉須の原料-天然呉須と合成呉須の原料を解説
天然呉須
イスラム地域の天然呉須
蘇泥勃青(すまると)や回青等と呼ばれます。 回青と呼ばれるのは、イスラム教が回教とも呼ばれていたためです。 また、明の時代までイスラムから中国に輸出していました。中国産の天然呉須
日本では天然呉須は唐呉須とも呼ばれることがあります。 これは、江戸時代に中国で産出する天然呉須を用いていたからです。 江戸時代の染付はこの中国産の天然呉須を輸入して製作されていました。 中国で天然呉須が掘られるようになったのは、明の時代にイスラムからの天然呉須の輸入が途絶えたためです。 それから、中国国内で天然呉須を採掘できる鉱山を探して利用するようになりました。 その結果、中国の雲南省、広東省、江西省、浙江省、浙江省紹興市、浙江省金華市などで天然呉須の鉱山が発見されました。日本産の天然呉須
不純物が多く呉須絵の具としての品質はさほど高くないですが、日本でも1665年頃から呉須を採掘していました。 場所は、愛知県瀬戸市から多治見、土岐市に至る新生代第三紀層で天然呉須が産出していました。 この天然呉須の採掘は尾張藩に管理されていました。 この呉須の鉱山は、明治時代に海外から純度の高い酸化コバルトが安価に輸入できるようになり、閉山となりました。合成呉須
酸化コバルト(CoO)
酸化コバルトの取りうる酸化数 ・酸化数2 Co2+:CoO ・酸化数3 Co3+:Co2O3 ・酸化数が2と3混合:Co3O4 ※Co2O3はほとんど天然中に存在しない。 陶芸で用いられる酸化コバルト CoO CoOは灰色から黒色を粉末です。融点(固体から液体に溶ける温度)は1933℃です。 よく有田焼をコバルトブルーという表現がされますが、これは、有田焼の青が酸化コバルトを主成分としているからです。酸化鉄(Fe2O3)
酸化鉄は鉄の酸化数が2のFeO、酸化数が3のFe2O3、酸化数が2と3が混じったFe3O4 があります。 Fe3O4 はいわゆる黒さびのことで、Fe2O3はいわゆる赤さびのことです。 陶芸で用いられるいわゆる弁柄はFe2O3のことです。融点(固体から液体に溶ける温度)は1566℃です。 なお、弁柄(ベンガラ)と呼ばれるのは、江戸時代にインドのベンガル地方産の物を輸入したためです。 鉄は褐色に色付きます。酸化ニッケル(NiO)
酸化ニッケルは酸化数が2のNiOと酸化数が3のNi2O3があります。 陶芸で用いられるのはNiOです。融点(固体から液体に溶ける温度)は1984℃です。 酸化ニッケルは鮮やかな緑色に色付くため着色剤として使われます。二酸化マンガン(MnO2)
二酸化マンガンはマンガンの酸化数が2のMnO2です。融点(固体から液体に溶ける温度)は535℃です。 二酸化マンガンは紫色に色付きます。酸化アルミニウム(=アルミナ,Al2O3)
アルミナはアルミニウムの酸化数が3のAl2O3です。融点(固体から液体に溶ける温度)は2072℃です。カオリン(=カオリナイト,Al4Si4O10(OH)8)
陶芸では主に粘土として用いられます。このカオリンを入れることで生地(お皿)と呉須の接着が良くなるために用いられます。 以上が、呉須に用いられる原料です。 さて、呉須の原料として用いられる物質の融点がどれも1300℃以上です。 しかし、融点より低い温度で焼成しても液体化しているのは、 呉須の原料や釉薬の原料が一緒に焼かれることで共融反応を起こしているからです。 今回は呉須の原料についてご紹介いたしました。 弊社の呉須は長年かけて、これらの原料が美しい呉須色になるようにバランスを調整しております。弊社の合成呉須をご購入されたい方はこちらのリンクよりご購入いただけます。
参考文献:大西政太郎.陶芸の伝統技法.理工学社.1978 参考文献:瀬戸市.瀬戸市史〈陶磁史篇 第3〉.瀬戸市.1967